教科書の先の新しい「化学」

皆さんは、将来、「化学」で社会に貢献することを志して、「化学」を学ぶ学科に入学しました。講義で「化学」を学ぶことはもちろん大切ですが、世の中が「化学」にどういった期待を寄せているのかを知り、何のために学ぶのかを考えることも大切だと思います。

ここで、IBMで次世代コンピューターの開発に携わっているナノエレクトロニクスの研究者であるGeorge S. Tulevski博士のTED Talkを紹介します。一度、ご覧ください。

今現在、「ナノ材料は確かに素晴らしい、けれども、どうやって使うかが難しい。」という問題に直面しています。そして、Tulevski博士は、ナノテクノロジーで世の中に貢献するには、そのための新しい「化学」が必要不可欠だと考えました。

教科書に書いてあることは、偉大なる先人達が、人類への貢献を夢見て研究してきた、これまでの化学です。皆さんは、大学で、まず、それを勉強します。けれども、皆さんの「志」(=社会に貢献する)は、その先にあります。これまでの膨大な化学の知識体系の上に、新しい「化学」を、ほんの少し付け加えることで、コンピューターはもちろん、再生可能エネルギー、医薬、構造材料など、様々な分野での社会貢献が可能になるのです。

なぜならば、「分子」をツールとして使う化学は、ナノ材料の利用方法に非常に大きなインパクトを与えるからです。

さて、ここでTulevski博士が紹介しているカーボンナノチューブを並べる技術は、化学者が、「自己組織化」と呼んで研究しているものです。「分子」をデザインして、望みどおりに並べる技術は、皆さんがこれから学ぶ「有機化学」の教科書の上に、今、少しずつ付け加わりつつある新しい「化学」ということができます。

高口は、皆さんが、「教科書の先を志して、教科書を学ぶこと」を忘れないでほしいと願っています。

そして、高口研では、カーボンナノチューブを使って、光機能材料を開発するための、新しい「化学」を、今、まさに、生み出し続けているところです。これを完成させ、太陽光エネルギーの利用効率を格段に向上させることで、社会に貢献することを志しているのです。

Tulevski博士とは、少し異なる「志」ですが、問題意識は同じ、ということができます。

皆さんにも是非、同じ「志」を持って、共同研究者として、高口研に加わっていただきたいと思います。4年生になった時に、一緒に研究に打ち込めることを楽しみにしています!

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Tulevski博士のカーボンナノチューブを使ったナノエレクトロニクス関係の研究解説は、以下のビデオをご覧ください。TED Talksの前年のものですが、より詳しい内容について説明されています。

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カーボンナノチューブの太陽電池材料(=原理的には光触媒にも応用できる)応用については、以下の論文で勉強するのがオススメです(学内からアクセスすればダウンロード可能です)。

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J. L. Blackburn, ACS Energy Letters 2017, 2, 1598.

 

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