結合エネルギーを使って、⊿Hを大雑把に見積もることは、反応が進むか進まないかを予想する上で大切なテクニックです。
講義では、H2 + Cl2 → 2 HCl と H2 + I2 → 2 HI を例に、この手法の有効性を説明しました。
ただ、この計算をする時に、⊿Hの符号が逆になると悩む人がいるようです。
(生成系)−(原系)で考えると、どちらもプラスになってしまうと言うのです。
確かに結合エネルギーをそのまま使って計算すると、そうなりますが、この場合、結合エネルギーに負符号(−)を付けてやれば問題解決です。(これ、いろんな説明の仕方があるかと思いますが、昨日質問に来た学生さんは、この説明のしかたが一番しっくり来たようなので、この説明の仕方で解説します。)
なぜ、マイナスの符号をつけて考えるかと言うと、
平たく言えば、結合エネルギーは、結合を切るために必要なエネルギーだから。と言うことになります。したがって、結合を作るために必要なエネルギーは、真逆の反応ですから、[−(結合エネルギー)]と負符号を付けてあげる必要があるのです。
結合エネルギーについては、バーローの教科書では上巻の162頁に記載されています。「ヘスの法則」と熱力学方程式は、高校の化学で勉強しており、その考え方はマスターしているのですが、結合エネルギーの値が、結合を切るときのエネルギーなのか、結合を作るときのエネルギーなのかが混乱していると、符号が逆になるという疑問が生じるのだと思います。
なに言ってるのか分けわかんないよ!という人は、どうぞ質問に来てください。
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おまけ:
- 結合エネルギーが大きいほど、安定な結合になっていることに注意しよう。エネルギー図を考えるとき、負符号をつけて考えないと、安定・不安定が逆転してしまう。
- 平均結合エンタルピーについては、こちらの「化学資料集」11頁をご覧ください。これは使える表だ!この資料集はいろいろ載っていて便利です。