高口研では、皆さんの到達目標を、
「自分の研究成果を研究論文としてまとめ、発表できるようになること」
「リサーチプロポーザルを作成できるようになること」
の2つと考えています。
特に、「自分の研究成果を研究論文としてまとめ発表できるようになること」は、初めにクリアすべき目標として意識をして下さい。なぜなら、「研究者」と「実験者・作業者、あるいは評論家」との違いは、研究論文を発表するかどうかにあるからです。学位の価値は、「研究者」としての力量にあるわけで、学士は学士なりの、修士は修士なりの、そして、博士は博士なりの「研究者」としての力量を身につける必要があります。実験や作業をするだけであれば、その手順や技術を訓練をすれば良いだけで、なにもわざわざ学位を取得する必要はありません。
ではどうやって、毎日の実験を研究論文へと繋げるかについては、George M. Whitesides教授の随筆がとても参考になります。
Whitesides’ Group: Writing a Paper
この随筆はとても有名で、和訳がChem-Stationの記事になっています。こちらでも構わないので、必ず読むようにして下さい。
Chem-Station記事:Whitesides’s Group: Writing a Paper
高口研では、この手法をベースに、各研究チームで「Outlines」を作成し、常にアップデートし続けるようにしています。これについては、別の機会に詳しく説明するとして、今日は、論文草稿を書く前に、今一度、確認すると良いことを2点、紹介しておきます。皆さんが、はじめて論文を書こうと思ったら、書きはじめる前に、必ず以下の記事に目を通して下さい。
【1.英語の問題】
英語を母国語とする人でも、English Writingの勉強をするわけですから、私達日本人が、何の勉強・準備もせずに、論文に相応しいカッチリした文章を書くことができるはずがありません。そういう意味で、「The Elements of Style」は、一度は読まないといけない英語の教科書と思います。少し古い版ですが、第4版であれば、PDFファイルをダウンロードすることができます。また、初版ですが、森田尚さんが日本語訳を公開しておられます。こちらでも構わないので、とにかく一度目を通し、どんなことが書いてあるかだけでも見ておけば、実際に草稿を書く際に、読み返すことができます。
【2.論文の「型」について】
論文には「型」があります。特に、初心者は、「型」を意識して、草稿を準備するようにして下さい。これについて、スタンフォード大学のB. R. Weingast先生から「CALTECH Rules for Writing Papers: How to Structure Your Paper and Write an Introduction」として紹介されています。必ず、一度、読んでください。
憧れの研究者の高被引用論文を真似するのでは無くて、論点を一つに絞った、分かりやすい、基本の「型」を持つ論文を真似しなくてはいけません。そして、論文を書く前に、今一度、自分の論文のポイントをごく簡単な数行の文章で表せるか?すなわち、論点が整理され、一つに絞れているか?を確認して下さい。文中に紹介されているMcCloskey先生の格言「理解してもらうために書くのではない、ちょっとでも誤解させないために書くのだ!」ということを肝に命じてください。皆さんが、憧れの研究者の論文を読むように、読者が皆さんの論文を読むことは、(残念ながら)、無いのです。
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引き続き、「論文草稿のパラグラフを書く」をご覧ください。