有機機能材料学実験では、お茶からカフェインを抽出(水溶性の化合物の中からカフェインを単離)し、カフェインを原料にして蛍光分子を合成するわけですが、今回は、茶葉に含まれる「脂溶性物質」について注目し、脂溶性物質の分離実験をしてみました。この実験では、光合成の光捕集の役割をしているクロロフィルの蛍光、以前に演習問題で紹介したβ-カロテンの色などを観察できます。
日時等:2017年11月7日 15:20頃 参加者:学生約25名
実験手順
1 おーいお茶Tバック1つを、数秒アセトンの入ったサンプル瓶に入れた。
→ 溶液は、緑色に(アセトンなので飲めません!)になった。
2 薄層クロマトグラファイー(TLC)に抽出した緑色溶液をスポットした。
3 展開溶液にヘキサン:アセトン=7:3を用い、TLCをあげた。
→ TLCで色素が分離される様子が観察された。
4 TLC上の色素の色と、UVライトを照射したときの変化を観察した。
5 展開液から取り出した直後は赤色の蛍光が観察されたが、1時間たつと蛍光強度はかなり弱まっていた。
こちらに、TLCの色と蛍光、および分離した分子の構造をまとめておきます。受講者の学生さんは、これまでに、分子の色や蛍光、分子構造の相関について学習していますので、どうして色が異なるのか、蛍光を発するのかなど、分子構造について注目し、考えてみると面白いと思います。
なお、このクロロフィル、次回に学習するエネルギー移動のFörster機構で登場します。
植物は葉緑素(クロロフィル)で光を吸収し光合成を行いますが、使えなかった光の一部を赤い光に変換して発光します。
光化学第一法則、第2法則、量子収率、こういった学習したことを踏まえると、
・発光しやすい分子は反応しにくい。
・反応しやすい分子は、発光しにくい。
ということになります。このあたりを性質を使って、最近では、農作物のクロロフィルの蛍光を観測し、植物生育診断装置なるものが開発されているようです。