沸点の高い油状の有機物質を得る方法として、古くから水蒸気蒸留(steam distillation)が用いられてきました。
ユーカリ油(eucalyptus oil)やラベンダー油(lavender oil)などは、医薬品やアロマテラピーなどに利用されることから、みなさんも一度はその匂いを嗅いだことがあるだろうと思います。このユーカリ油の主成分はユーカリプトール(eucalyptol )(IUPAC名 1,3,3-trimethyl-2-oxabicyclo[2.2.2]octane)ですが、この沸点は176 – 177 ℃にもなりますので、通常の蒸留法でユーカリの葉からユーカリ油を分離生成しようとすると、熱による分解反応が進行し、ユーカリプトールが得られません。
オールブラックスの魔法のやかんにも入っているという噂(<本気にしないでね)の、薬効成分を含むユーカリ油は、先人の知恵により、水蒸気蒸留の原理を用いることで、ユーカリの葉から、その成分が分解されること無く、取り出され、利用されて来たのです。実験室で組み立てる水蒸気蒸留(steam distillation)の実験装置は、例えば、こちらの動画のようなものですが、エッセンシャルオイルを製造する際には、簡易型として、こちらの動画のような装置が使われています。
ここで、ハーブウォーターとエッセンシャルオイルの違いを学んだみなさんは、なぜエッセンシャルオイルが高価で、ハーブウォーターがお手頃価格なのか、よくおわかりと思います。
ちなみにですが、ユーカリ油の主成分であるユーカリプトールは、スパイクラベンダーのエッセンシャルオイルにもかなりの量含まれているそうです。匂いを嗅いでも気づきにくいと思いますが、こういう、全く異なる植物の作る物質の共通性みたいなものも、実に不思議で面白いものだと思います。