環境有機化学I (2019) 第3回講義

第3回講義の補足資料をおいておきます。
パスワードは講義で伝えます。
環境有機_第3回補足資料

光化学の主役は「電子」ですが、第3回の講義では、それが所属する「分子軌道」について、もう少し理解を深めます。
簡単にいうと有機化学の教科書ではその内容を扱いきれず、量子化学でも学習しているけど、一体何のこと?という部分の橋渡しをします。
すでに学習している量子化学の復習が多くなると思います(そんなのわかっているよ〜という学生もいると思います)。

講義の中で、そもそもHückel分子軌道計算って何?
箱の中に閉じ込められた粒子って何のこと?
このあたりが理解できると、
「式の導出は勉強したが、何に使えるのか、何を意味しているのかわからない」ということがなくなるのではと思います。
式の導出は大事かもしれませんが、我々は数学者を目指しているわけではありません。
何を意味しているの?
何に使えるの?
こっちの方がもっと大切かもしれません。

そのあたりが理解してくると、有機化学と量子化学、実験と理論が見事に調和している部分について、その奥義のすごさを感じることと思います。
本日のお話の内容は、指定している光化学の教科書にほとんど書いてありません。
以下の参考書を薦めます(岡山大学図書館にもあります)
「電子の動きと分子軌道による有機化学反応の解釈」 本吉谷 二郎 著 三共出版

以下に補充問題を置いておきます。講義中にも少し扱いますが、扱いきれなかった部分については、各自で復習しておきましょう。

補充問題1
Coulsonの式を使って(注意 関数電卓を使う必要はありません)
(a) n = 5 (ペンタジエニルアニオン, ペンタジエニルカチオン、ペンタジエニルラジカルに相当)のπ分子軌道図を描け。
(b) 1,3,5-ヘキサトリエンのπ分子軌道図を描け。

補充問題2
trans-1,3,5-ヘキサトリエンの分子長 は、867 pmである。最高占有状態と最低非占有状態の間のエネルギー差を予測しなさい。
このエネルギー差を用いて、trans-1,3,5-ヘキサトリエンの吸収の最大波長を求めなさい。

補充問題3(やや難)第44回国際化学オリンピック(2012)理論試験の部より
ニンジンのオレンジ色はβ-カロチンによるものである。井戸型ポテンシャルモデルを用いて、最高占有状態と最低非占有状態の間のエネルギー差を予測しなさい。
このエネルギー差を用いて、β-カロチンの吸収の最大波長を求めなさい。なお、β-カロチンの分子長は 1850 pmである。
感想)国際化学オリンピックは「高校生を対象とした」化学の知識や問題を解く能力を競う国際大会ですが、出題問題が、すごいですね。

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