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  • 単層カーボンナノチューブ光触媒による水からの水素製造
    • 1. はじめに
    • 2.1 半導体性カーボンナノチューブ
    • 2.2 半導体性カーボンナノチューブを光触媒材料に使う上での問題点
    • 2.3 SWCNTを光触媒材料に利用する解決法
    • 2.4 SWCNTを水に可溶な光触媒へ
    • 2.5 SWCNT/C60光機能界面の性質
    • 2.6 SWCNT/C60を用いた光触媒の開発
    • 2.7  様々な表面修飾カーボンナノチューブ光触媒を自在につくる
    • 2.8 水の完全分解(Z-scheme 型光触媒系)を目指して
    •  これまでの述べたSWCNT 触媒は,光増感剤(光を吸収する物質)と助触媒(水を水素に変換する物質)に加え,電子輸送剤(光増感剤から助触媒への電子を受け渡す物質)の3 成分系となっている.この3 成分系は,電子リレーの拡散により,逆電子移動を抑えるという長所があるものの,光増感剤から電子輸送剤,電子輸送剤から助触媒という2 段階の電子移動が必要であるため,多段階電子移動によるエネルギーロスが問題となる.更に,現在,盛んに研究されている二段階励起による水の完全分解(Z-scheme 型光触媒系)への展開を指向した場合,電子リレーの存在が大きな問題となる.我々は,SWCNT 光触媒のデンドリマー層に,金属と錯体形成可能な第3 級アミンや,オキシカルボニル基があることに注目し,同軸ケーブル状のSWCNT 光触媒に,直接,助触媒となる白金錯体を直接担持した光増感剤/助触媒連結系の構築について検討した19, 20)図8 に,白金(II)錯体を担持する前のSWCNT/フラロデンドロン超分子複合体と白金(II)錯体担持後のSWCNT/フラロデンドロン/Pt(II)ナノハイブリッドの透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す19).2-3 nm のナノワイヤーが観察され,そのコントラストが高くなったことから,超分子複合体のシェル部に,Pt2+が複合化していると考えられる.また,X 線吸収端近傍構造解析(XANES)の測定から,白金0価と白金4価の間に,吸収が観測されたため,超分子複合体に配位している白金は2価であることがわかった.SWCNT/フラロデンドロン/Pt(II)ナノハイブリッドに,Tris-HCl 緩衝液中,犠牲ドナーとしてBNAH を添加し,可視光照射(>420 nm)したところ,電子リレーであるメチルビオロゲンが存在しなくても8.6 μmol/h の水素が発生した.更に,450 nm の単色光を用いて量子収率を求めたところ,0.16 と比較的良好な値を得た.特に,触媒回転頻度(TOF)に注目すると,3 成分系で0.05 h-1であった触媒回転頻度(TOF)が,光増感剤/助触媒連結系では7.0 h-1 と140 倍にも向上していることが明らかとなった.こうしたSWCNT触媒の表面修飾は,軸剤として用いるs-SWCNTsにも適応可能で,(6,5), (7,5), および(8,3) SWCNTをもちいて、s-CWCNT/フラロデンドロン/Pt(II)を合成し,単色光を用いたヘリシティー選択的なSWCNTの光励起による水素発生を行うと,(6,5)-SWCNT(570 nm),(7,5)-SWCNT(650 nm),(8,3)-SWCNT(680 nm),(8,3)-SWCNT(1000 nm)での光水素発生の量子収率は,それぞれ0.35%,0.17%,1.5%,7.3% となった20)このように,光増感剤/助触媒連結系においても,近赤外領域で高い活性を示すため,水の完全分解(Z-scheme 型光触媒系)への展開が十分に期待される.

    • 3.おわりに
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