Q どういう指導方針ですか?
A 個人個人のペースにあわせた目標を設定しています
4年生に配属されて、最初からなんでもできるという人はいません。人それぞれ、どういうステップを踏んで、実験科学者へと成長していくのかは異なります。当研究室では、個人個人のペースにあわせて指導するように心がけています。詳しくはこちらをご覧ください。
ただし、「ペースが遅い」=「研究室にこない」ではありません。
がんばって実験をしているがうまく成果がでない→指導教員が悪いです。
実験をしないので成果がでない→指導教員はどうしようもないです。
その点を勘違いしないようにしてください。
A 優れた「研究者」を社会に出したいと願っています
「自分は就職希望だから、研究者と言われても、どーでもよい」とか「大学院に就職してもアカデミックには進まないので研究者といわれても困る」な〜んて思っていませんか?世の中すべて、「答えのない問題に対し、論理的思考と仮説に基づき挑んでいる研究者」だと自分は思っています。
例えば、
お笑い芸人=人を笑わせることを必死に考える研究者(答えはありません)
スポーツ選手=技術の向上と最高のパフォーマンスを考える研究者(答えはありません)
子育て=子どもの健全かつ優良な成長を必死に考える研究者(答えはありません)
セールスマン=どうやって商品を買ってもらうかを考える研究者(答えはありません)
料理人=おいしさを追求する研究者(答えはありません)
受付=様々なお客様に対して臨機応変な対応をするにはどうしたらよいかを考える研究者(答えはありません)
こうしてみると、世の中、答えのない問題に対し、論理的思考と仮説に基づき挑んでいる研究者だらけだと気がつきます。自分は化学の研究をしていて、化学の研究は素晴らしいし、楽しいと思っていますが、世の中、化学研究者だけだったら社会はまわりません。多種多様な研究者(色々な業種の人を指しています)がいて、社会がまわっていることになります。
そう考えると、理系の研究室は「論理的思考と仮説に基づき問題を解決しよう」という訓練に、最適な場でしょう。どうしてそう思うのかって?
論理的思考と仮説に基づき問題を解決しよう→ 実験で仮説を検証する → なぜそうなったかを考える → 論理的思考と新しい仮説に基づき問題を解決しよう と失敗をしてしまっても、繰り返して成長できるからです。
是非、有機研で答えのない問題に立ち向かえる研究者を目指しましょう。そしてもし願うのであれば、化学バカになって研究室で一緒に楽しんでもらえると良いと願っています。
Q 研究室のモットーは何ですか?
A 次の3つです
安全第一:安全はみんなの高い意識にかかっている
環境美化:美しい研究は美しい環境からしか生まれてこない
頑張る人を応援する:他人の努力を見逃さず,応援しよう
Q セミナー等は?
A 次の4つです
研究報告:毎週水曜日の17:00~19:00に全員参加のゼミを行っています。
進捗報告:水曜日以外の平日17:30~18:00に行っています。研究に関するオフィスアワーと考えてください。
曜日を決めて、最低1人が1週間に1回研究に関することについて議論しています。全員が毎日参加する必要はありませんが、困っている人がいれば自由に相談をすることができます。また、新型コロナウイルス感染症で建物への入構が禁止になり、実験ができない時期には、学生生活がどんな様子なのかなどを話してもらいました。
文献抄録:毎週月曜日と金曜日の17:00~17:30
最新の論文を読んで、その内容を指定された書式のパワーポイントファイル1枚にまとめて発表し、議論をします。
合同ゼミ:土曜日13:00~(月に1回)
富山大学、金沢大学の有機系の研究室とWebでセミナーをしています。参加できる人が参加する形で強制参加ではありません。
Q コアタイムは?
A 設けていませんが、朝9:30には研究室に来ましょう。
1年間毎日9:30に来なさいということではなく、研修期間だと思ってください。新B4の学生さんは最初は何もわからない状態で当たり前です。何をするにしても、ほとんどすべてが知らないことだと思います。さらに実験には危険が伴いますので、最初は人がいるときにしっかりと実験を教わる必要があります。ですので、新B4の学生さんには、自分がしっかりと一人前になって実験ができるまで、先輩は後輩が一人前になって実験ができるまで最低3ヶ月は朝ちゃんと研究室に来るという生活をしていただきたいと思っています。また、はやく先輩と後輩で仲良くなると研究室生活も楽しくなります。研究をするリズムができ、一人で実験が満足にできるようになればフレックス制にしても良いと思っています。会社のことはわからないことが多いですが、おそらくフレックス制ですという会社に入っても、最初は研修という期間があるわけで、入社初日からフレックス制というところはないと思います。
どんな研究をしているの?
A 有機研では、有機化学の得意とする化学修飾を駆使して、典型元素の特性を活かした機能性材料の開発を行っています。生命系の学生さんも化学系の学生さんも両方とも楽しむことができるテーマだと思います。
一例を紹介します。
ホウ素中性子捕捉療(BNCT)は2020年に日本で医療化がスタートした次世代がん治療法です。ホウ素の同位体である10Bに熱中性子を当てると、強力な細胞殺傷力をもつ粒子(アルファ線とリチウム粒子)が発生します。細胞1つ分程度の距離しか飛ばないため、がん細胞内に10Bがあれば、そのがん細胞のみを破壊します。
BNCTではこれまでホウ素フェニルアラニン(L-BPA) とホウ素クラスター(BSH)の2つの薬剤が臨床研究に用いられてきました。下にBNCTの説明に関する動画を示しましたが、L-BPAは薬剤として承認されている唯一のホウ素薬剤でアミノ酸トランスポーターを介してがん細胞選択的にとりこまれます。
https://www.youtube.com/watch?v=cQrbfBiQpfk
一般的に薬剤を用いたがん治療では、がんの進行が進むにつれ様々な種類のがん細胞が発生するため、耐性がん細胞が残らないよう、複数の薬剤を併用し治療を行う多剤併用療法が用いられています。しかしながら、BNCTの分野ではL-BPAはホウ素薬剤として大変優秀ですが、第2のホウ素薬剤がありません。BSHが第2のホウ素薬剤の候補としてあげられていますが、薬剤ががん細胞に入ったことを確認する生体イメージング法が確立していないこと、がん細胞への選択性がないことや細胞に蓄積しないことが問題となっており、第2、第3のホウ素製剤がないのが現状です。
これは、BNCTでBSHを扱う学者の多くが、入手可能な分子を扱う医学、生化学者であるため、望まれる分子機能を設計し、分子を生み出す化学者が圧倒的に不足しているためであると考えられます。有機化学者は有機反応が得意ですが、研究対象に無機材料であるホウ素クラスターを選択しにくく、無機化学者はホウ素クラスターに関して有機化学の得意とする分子修飾をしないため、合成化学の観点からも有機典型元素化学者が開拓する必要性の高い研究領域となっています。
私たちは、有機化学の得意とする化学修飾を駆使し、ホウ素クラスターの化学修飾を行うための反応の開拓や、生体イメージング能の付与、がん細胞への選択性の付与などに取り組んでいます。
有機化学という学問は、一般的にですが、合成反応をして、精製をして、何ができたのかを解析するという3つの実験がセットになっています。研究に時間がかかることが多いので、コツコツと毎日実験をされる学生さんが向いていると思います。また先輩と後輩でチームとなり研究を進めていただきます。
そのため、以下の質問に対して、「3つ以上、Yes」となる学生さんは、研究室に配属されたとしても学生さんも先輩も指導教員(田嶋)も幸せになれない可能性がかなり高いです.
質問リスト
- 研究室に来ずに済むようにしたい
- 卒論前にがんばれば、卒論はなんとかなると思う
- 先輩・後輩の付き合いが苦手だ
- 実験はできればしたくない
- 研究活動に時間を割きたくない
- できれば頭は使いたくない
- 簡単な研究テーマに取り組みたい
- なぜかを考えるよりも、解答をすぐに教えてほしい
- 目標に向かって努力をするということをしたくない
- 研究を進めるための勉強はできるだけ避けたい
- 英語論文を読むのは避けたい
Q どんなところに就職しますか?
A こちらにまとめていますのでご欄ください。推薦などは、学科や専攻科単位で求人票がきますので、教授がいない研究室は就職に不利ということは決してありません。
是非、有機研で、一緒に研究・開発をできればと思います。