- 単層カーボンナノチューブ光触媒による水からの水素製造
- 1. はじめに
- 2.1 半導体性カーボンナノチューブ
- 2.2 半導体性カーボンナノチューブを光触媒材料に使う上での問題点
- 2.4 SWCNTを水に可溶な光触媒へ
- 2.5 SWCNT/C60光機能界面の性質
- 2.6 SWCNT//C60を用いた光触媒の開発
- 2.7 様々な表面修飾カーボンナノチューブ光触媒を自在につくる
- 3.おわりに
2.3 SWCNTを光触媒材料に利用する解決法
本研究を開始したころには,上述した4つの問題が避けられなかったが、科学技術の発展とともに解決されてきたように感じている.
(1)の問題は,SWCNTの半金分離法の発展により,純度99.98%以上のs-SWCNTが得られるようになり,単一のヘリシティーSWCNTの分離精製法も開発されている上,近年ではs-SWCNTや特定のヘリシティーがエンリッチされたSWCNTも市販されている.
(2)の問題については, ドデシル硫酸ナトリウム,ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム, コール酸ナトリウム, デオキシコール酸ナトリウムなどの界面活性剤や,多環式芳香族分子とSWCNTsとのπ-π相互作用による物理吸着を利用した例として,ピレン,ポルフィリン,アントラセン,ペリレンなどの部位をもつ低分子がSWCNTsの分散剤として機能することが報告されており,水に分散させることが可能となっている(7).
(3)については,s-SWCNT界面に適切な電子受容体を物理吸着させたヘテロ接合を形成すると,効果的にキャリアを生成させることが可能であることが示されている.電子受容体のLUMOとSWCNTの伝導帯のバンドオフセットを考慮することが重要で,材料設計の指針が明らかになり初めている.Arnoldらは,(6,5),(7,6),(8,6) など比較的バンドギャップの大きなs-SWCNTに対し,電子受容体としてフラーレンを用い,ヘテロ接合系太陽電池を作製すると,IQEが85%以上になることを報告している(8).
(4)については,s-SWCNTの表面に他材料と親和性の高い官能基を直接導入したり,分散剤に適切な官能基を導入することで,他材料との複合化が可能になってきている.7) フラーレン・カーボンナノチューブ・グラフェン学会編, カーボンナノチューブ・グラフェンハンドブック, 181-190, (2011), コロナ社.
8) D. J. Bindl, M. S. Arnold, Efficient Exciton Relaxation and Charge Generation in Nearly Monochiral (7,5) Carbon Nanotube/C60 Thin-Film Photovoltaics, J. Phys. Chem. C, 117 (5), 2390-2395 (2013).プッシュ通知を